家庭で引き取るほど支援が消える国

― 中途養育者が制度から排除される構造について

日本では、親が育てられない子を 「親族・継親・知人」などが引き取ると支援が消える という逆転現象があります。

たとえば:

  • 祖母が引き取る → 支援なし

  • 継親が育てる → 支援なし

  • 親の友人が育てる → 支援なし

  • 養子縁組しても → 支援なし

しかし

  • 見知らぬ家庭が「里親制度に登録して育てる」 → 支援あり

この違いは、子どもの生活や安全とは無関係です。

違うのは 「どの制度に入っているかどうか」だけ。


■「中途養育者」とは?

国や自治体の制度の外に置かれたまま子どもを育てる人たちのことです。

  • 親族(例:祖父母・きょうだい・伯叔父母)

  • 継親(再婚家庭)

  • 親の友人・知人

  • 未成年後見人

  • 養子縁組家庭 など

彼らは「家庭で子どもを守っている」のに、
制度上は 支援対象ではない扱い になります。


■ なぜ支援されないのか?

理由はとても単純です。

日本の制度は「実親か、制度に登録した里親か」しか想定していないからです。

つまり:

  • 子どもを守るために家庭で引き取る → 支援ゼロ
  • 制度に登録して委託される形を取る → 支援が発生

→ ここに 制度差別 が存在します。


■ 国際的にはどう見られる?

国連子どもの権利条約ではこう決められています:

✔ 支援の対象は「養育者の属性」ではなく「子どもの最善の利益」で決めること

日本の制度はこれに反しています。

国際的には

  • 「親族だから」支援しない
  • 「継親だから」支援しない
    という制度は “国家による差別” と評価されます。

■ これは制度の不備ではなく “構造”

支援がないのではなく、
支援を拒否する制度設計が存在している。

それが中途養育者問題の本質です。


■ そしてこれは “子どもにとっての不平等” です

支援が届かないのは中途養育者だけではありません。
その子ども自身が、制度上「支援されない側」に分類されてしまうからです。

日本の制度は次のようになっています:

子どもが暮らす場所 公的支援の扱い
施設・里親家庭(社会的養護) 生活費・教育費・進学支援・自立支援あり
実親家庭 基本的に児童手当以外ほぼ支援なし
親族・継親・知人など中途養育家庭 支援ゼロ(社会的養護と同等の援助なし)

同じ「親が育てられない子」でも、

  • 施設に入る → 支援あり
  • 家庭で引き取られる → 支援ゼロ

という逆転が起きています。

「家庭で育つほど支援が消える」という制度構造が存在しています。


■ 結論

これは「家庭の努力の問題」ではありません。
「制度が子どもを守らないようにつくられている」という問題です。