5)実子以外の子育てのストレスとは何か

03.「実子でない子育て」アンケート

アンケートの問12、「実子以外の子育て」のストレスを自由記述欄にて書き込んでもらったテキストに対し、(IBMのSPSS)を使用して分析を行いました。

 

テキストマイニングは通常の文章からなるデータを「単語」や「文節」で区切り、それらの出現の頻度や共出現の相関、出現傾向、時系列などを解析することで有用な情報を取り出す、テキストデータの分析方法です。

同系列のものを抽出することが得意であっても多義に亘る単語や文節を含むケースから傾向を探ることには適していませんが、中途養育未経験者と経験者の違いを如実に示す方向性を見出すことは出来たと思います。

● 未経験者においては一つのはっきりとした傾向を見出すことが出来ました。それは「母」「子」「社会」の相関であり、「父」やその他の「家族」が抽出されない点も特徴的でした。また、「実子ではない」こと、「血が繋がらないこと」を重視している傾向が見受けらました。未経験者における中途養育の困難に関る概念化は非常にシンプルで判りやすいといえるでしょう。それが多くの固定概念の元となっていることも示唆していると思われます。

● 職業的養育群においては「子ども」「子どもが持つ養育困難」、要因としての「実親」の関係性となりました。困難要因の概念マップとしては複雑ではありません。しかし、愛着障害など「子ども自身が抱える問題」自身が対応しきれない現状が、ストレス要因として最も高くなっている他、施設養育の仕組みに関るストレス(養育方針が変わるなど)も挙がっていました。

● 里親群はその「自ら望んで養育者になった」部分からも読み取れるように「何をしたらいいのか」という積極性が文脈にありました。「実親」の存在、つまり親権者ではない「弱み」としての感情は、その立ち位置からも特徴的であると思われました。

● 親族群はその回答数が少ないのでその傾向としては定かではありませんが、今回の調査の範囲では「問題はない」としている人が多いことはひとつの特徴のようにも思われました。しかしその文節から導かれるキーワードとして「恥」の意識と「決意」そして「責任(がとれない)」ことが挙がっていて、ここから里親群とは逆の「望んだ訳ではないが止むを得ず」養育に関るものとしての決意、それが「困難を表明することを」自主規制しているかのようにも感じられました。

● また、未経験者以外の以上の形態からは「実子ではない」ことは、ストレス要因のキーワードとして出てきませんでした。実際のストレスとして、血が繋がらないことが「該当しない」のか、あるいは、そこに触れることに中途養育当事者が「躊躇する」のかは定かではありませんが、血が繋がらないことへの困難を文章化すること自体がストレス、一つのタブー、「禁句」となっている可能性はあるかもしれません。

● 唯一、ステップファミリーにおいては「実子との関係」がありました。これは実子ではないこと(子ども自身に関るもの)というよりも、その継子と実子との関係、さらには継子と実親との関係性に起因する部分です。また、「甘やかし」「可哀想」「生理的」「罪悪感」などのキーワードを生んでいます。ステップファミリー群においては、「子ども」「実親」「家族」「社会的関係」「祖母(義母)」等の他にも、抽出される文節は多義にわたっており、枝葉の傾向を定めるのことが難しい部分がありました。これはステップファミリーそれぞれが、異なる困難を抱えているためであり、支援の難しさを示す部分でもあるでしょうし、この複雑性は、当事者間においても相互理解が難しいことを表しているのかもしれません。

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