仮設

03.「実子でない子育て」アンケート

著者は中途養育の形態別困難を調査するにあたり、過去の「養育形態を比較した調査研究」に関する論文を見つけることが出来ませんでした。

おそらく国内において、「実子ではない子の養育に関する形態」という観点からの研究は大変少ないか、研究は行われていないのかもしれません。

そこで著者は過去の形態毎の研究、「児童養護施設における研究」「祖母による養育の研究」、「ステップファミリーの研究」、「里親に関する研究」、また国内では殆ど研究されていないことから、「海外の親族里親の研究」等を総括することから始め、巷に溢れる「実子を基にした研究」との比較をすることとし、それらの研究から得た知見を元に、各養育形態別困難度の仮説を立てました。

養育に関る基本的環境の違いによって困難と感じる部分は異なることが予想されます。

例えば・・・

  • 社会的養護の枠組みの中では金銭的支援があるが、家族的(扶養)の範疇では原則的に金銭的支援はありません。通常、職業的養育者にとって養育は労働と見なされますが、家庭的(親族的)見地からすれば養育は扶養義務であって、養育行為は「報酬の対象」にはなりません。養子縁組等の相続世襲等の権利も見返りもない親族養育の「義務感」は、比較対象としてのストレス要因となりそうです。
  • 職業的養育においては勉強会研修などに参加することが義務化されていますが、親族的(扶養)の中には勉強会などは個人的に積極的に行動しない限り参加する機会はなく、仮に勉強の必要性を感じたとすれば、その検索にはかなり困難を伴うのではないでしょうか。
  • 職業的養育を担う者の中には独身で、子育て経験がない方もいます。そのような実子養育未経験者が様々な困難を抱えた子どもを養育する上での困難度合は、子育て経験者よりも高いのではないでしょうか。
  • おそらく「子ども自身に起因する項目」はストレスとして高いと思われます。しかしそれらは個々の子どもの特性に起因する訳で、養育形態による差にはさほど繋がらないのではないかと予想されます。
  • 家族的関係(養子縁組、扶養義務、あるいは、家系、血族の同居など)は本来養育形態と関係ないはずです。しかし、「家族を目指す養育者」には少なからず「親役割に関するジレンマ」が存在するのではないでしょうか。そういう意味から「家族・血の繋がりに関する項目」はストレス要因としては重要であり、なおかつ特殊な位置にあると思われます。
  • 「アタッチメント」理論が、社会的に「親役割を強要すること」に繋がっているのではないでしょうか。それは「一般の母親(実親)」と「その他の中途養育者」でどう違うのか。社会はどう求めていると(当事者は)感じているのかは、その養育形態によって、親役割の「演じ方」は違うようにも思えます。

等、様々な仮説が考えられます。

それら仮説は別表にまとめました。(詳細は資料:中途養育者の困難度仮説 参照)

仮説では、養育形態を・養護職員・里親・継親・親族・一般養育の5つに分類し、困難動機付け96項目に対し、それぞれの立場からのストレス度合(高、中、低、該当しない)の4分類を仮定し、合計点を算出しています。

「仮説上の得点」では養護職員107ポイント、里親143ポイント、継親234ポイント、親族202ポイント、一般養育群105ポイントとなっています。継親のポイントが高いのは、動機付け項目の多さに起因するといえるでしょう。また、「血の繋がる実母子ならでは」の困難項目なども想定されるため、これらポイント数の合計から単純に困難度の高低を測ることは出来ませんが、困難としての動機付け要因が多い継親や親族群は、中途養育においても養護職員や里親群と違ったストレスがあると考えられるでしょう。

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