01.過去の文献から中途養育を考える

ボウルビィによる代替養育案


ボウルビィ(1950)がWHO(世界保健機構)の要請により調査を行ったのは乳児院等の施設養護が子どもの発達に及ぼす影響を調べるだめでした

ボウルビィはその「乳幼児の精神衛生 」とまとめた著書の中で「乳幼児と母親(あるいは生涯母親の役割を果たす人物)との人間関係が、親密で継続的で、しかも両者が満足と幸福感に満たされるような状態が精神衛生の根本である」と結論づけました。つまり「母性的養育の喪失」が、乳幼児の精神衛生に不幸な結果を招くのであれば、その喪失をいかにして防止するか、あるいはそれが叶わない場合に、それをどのように「代替」するべきかということですが、ボウルビィが挙げる代替案は先ず「養子縁組」であり、次いで「養育ホーム」(boarding-home)でした。(一定の給与を受けて子どもを預かる家庭のことで、アメリカ及び国際連合報告で使用している用語。アメリカでfoster-homeという場合は、養子縁組を含むがイギリスでは含まないため、このよう区分している)

また、同書の中では不適応児及び健康不良児の保護を含む、児童保護事業の運営と研究上の問題についても触れていますが、ボウルビィがこの著作中で多くの頁を割いて論じていることの一つに「家庭の崩壊の防止」があります。

この点に関して社会は、どのような策を講じてきたのでしょう。

ボウルビィは「嫡出ではない子」の問題等も含め「家庭崩壊をいかに防止するか」が重要であると唱えました。

国際連盟の勧告に「家族に対する直接的な社会経済的援助、社会医療的援助を受ければ、充分自分の子どもを育てることが出来るような親から、簡単に子どもを引き離してはならない」とあります。

ボウルビィは、それが実現化されていない社会を「今日の政府は施設の乳児たちに1週30ドルを支給することはあっても、未亡人、未婚の母、祖母に対して、これの半額を支給して子どもを家庭で育てさせようとは考えない」と批判しています。

当時の公共機関、一般篤志家が、家庭を失った子どものためには惜しげもなく援助を与えるが、家庭そのものの援助には極端に消極的であるとも記述しています。 ボウルビィによれば「親族が引き取りを拒否しない限りは、完全な孤児にはならない」としています。

その引取りが拒否されるとすれば、その理由としては

(a)親族の死亡、老齢、病気

(b)親族が遠隔地に居住する

(c)親族が経済的に引き取る能力をもたない

(d)親族が引き取りをいやがる

(e)親族がない

等を挙げています。ボウルビィは「今日の西洋社会では自然的家庭集団がなにかの理由で欠損を生じた場合に、親族が子どもたちを引き取る習慣が多少とも残っている」こと、「大家族や緊密な家族集団の中にある人たちは、非常に安定感を持っている」ことにふれ「社会において、これら五つの要因がどの程度の意義を持つかということは非常に重要であるにもかかわらず、今日までのところ、この面での研究は行われていない」と述べています。

それにしても何組の親族が引き取りを拒否し、何組の親族が引き取っているのかなどの「この面での研究」とは、その後も60年以上にわたって殆ど結果が公表されていないのではないでしょうか。

 

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