02.Aさんという架空の事例を通じて

花子さんの発達について


花子さんの発達について「同年代の子と違っていると感じた」のは引き取って間もない頃に、花子さんを叱っている際、その反応に何となく違和感を感じたためだったと、Aさんはいいました。

当時は太郎くんが毛布に包まったり人前で座っていられなかったり、実行動があったため、学校や行政の教育相談など、太郎くんの支援を優先していた部分があったようです。

しかし、花子さんの日常的な癖、何か人の顔色を見てとっさに嘘をついたり、誤魔化したりしているような部分に気づき、その癖を早いうちに直さないと、社会に出たら大変だとAさんは思って、花子さんを叱ることが増えていったとのことでした。

そして「最初のうちは花子が嘘をついたり、誤魔化したりしているだけだと思っていましたが、日常的な物忘れや、文章読解の困難などを見て、意識的にやっているだけではないのではないかと思うように」なったとAさんは語りました。

その後、花子さんは公的な教育研究機関において「ADHD」傾向を指摘され、通級と、医師への通院記録を作ることを進められたそうです。

通級に関しては現実問題として

  • 「送迎すること」が難しい点
  • クラスで一人授業を抜け出して特別級に行かせることも「可哀想」ではないかとも思った点

この2点を考えて、実現しなかったとのことでした。

医療機関においては太郎くん同様、発達検査を受けさせました。

花子さんのIQは若干低く出ましたが、支援対象に届くほどではなく、いわゆる「グレーゾーン」の範疇であったようです。

ここでまた医師はAさんやAさんの妻の、養育における関わり方を批判し「もっと出来ないことを理解してあげてください」と言ったといいます。

しかし「出来ないことを理解したとして、花子は何処へ行けばよいのでしょう」とAさんは言いました。

「普通級で他の子より劣っていることをうすうす自覚し、虐められないように様々な策を練って必死で花子も太郎も生きていることは理解しているつもりです。しかし、私たちに扶養義務はあったとしても、養育権はないし、花子が成人した後の責任は取れません。成人した途端に、社会が受け入れてくれるとは思えませんし、私たちの扶養義務が無くなった後、なんの支援もなくなるのに、理解しただけで、自立出来るようにはならないでしょう。」

いずれにしても太郎君の場合と同様、Aさん夫妻はなんの支援も得られないのに時間をかけて医療機関に通院することの意義を見失ったといいます。

花子さんの小学校の担任はベテランの先生で、花子さんに関して多くを語らなかったそうです。つまり「勉強は出来ないがおとなしいので」問題はないと判断され、実際にそう言われたといいます。学級崩壊や不登校など、目に見える問題に比べれば、勉強は出来ないけれど休まず学校に来て、授業を壊すこともない花子さんに対して、担任の先生は問題を感じなかったということのようです。

「花子は見過ごされ続けたのです」とAさんは言いました。

花子さんへの評価は中学においても同じであり、「勉強の得意ではない、おとなしい子」とされたそうです。AさんやAさんの妻は、授業についていけない花子さんを何とかしようと家庭教師や塾の個別指導等で、勉強が遅れないよう帳尻を合わせてきたそうですが、Aさんたちの「金銭的な負担は大きかった」ようです。また、後で判ったこととして、その先生達は花子さんが理解出来ないことを理解できないまま、後別指導をしていたとのことでした。

試験で良い点を取ることは難しいものの、問題となる行動の少なかった花子さんは、私立高校へ推薦が取れたといいます。

しかしここで、スクールカウンセラーを通じ、公的な検査を勧められたとのことでした。

高校生になってようやく、花子さんは「軽度知的障害」の認定を受けることが出来たそうです。

この時間経過に関してAさんは「結果的に遅くなったかもしれませんが、認定を受けない選択もあったのだから、悲観することはなかったと思います」といいました。

あえて取得したのは花子さんの将来に関ることであり「その責任を負うことが自分には不可能であるから」だともいっていました。

現在、花子さんは高校を卒業し、職業訓練センターに1年通った後、障害者枠での就労が叶い、休まず通勤しているようですが、これもあくまで、花子さんが生涯、続けていけることであるとは思っていないとのことです。

それは花子さんの生い立ちに関る問題でもあり、成人した際の「権利」に関る問題だからだと、Aさんはいいます。

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