01.過去の文献から中途養育を考える

中途養育という概念について

バッカスの養育 中途養育という概念について

「中途養育」という概念について、多くの方はあまり耳慣れていないかもしれません。

このページでは、「中途養育」という概念がなぜ必要なのかについて、簡単に紹介させていただきます。

ボウルビィによる調査研究

「家庭のない子どもは何を必要としているか」について、ジョン・ボウルビィがwho(世界保健機構)の要請により、ヨーロッパ諸国とアメリカ合衆国における調査研究を行ったのが1950年でした。

その内容は1冊の著作としてまとめられました。

日本においては1967年に「乳幼児の精神衛生」という邦題で出版されています。(その後2008年に日本図書センター児童福祉文献ライブラリー第14巻として復刊)。ボウルビィ自身はその後「アタッチメント理論」を提唱し、その理論は今でも多くの方々に支持されているといえるでしょう。

「乳幼児期の発達において愛着形成が重要な役割を果たしている」という考え方は現代においても発達心理学者を中心に多大な影響を与え続けています。わが国の多くの研究家もこの「愛着」と邦訳される理論を支持しています。

一方で、アタッチメント理論からみて「愛着形成期に養育者が交替する場合」には様々な問題が発生することになる訳ですが、その「養育者が交替する」際の問題については一般的にあまり議論されていないように思われます。

著者の実体験による必要性

著者は諸般の事情より実子ではない子を中途より引き取り、育てるという経験を通じ、血の繋がらない子育て、あるいは今まで子どもが受けてきた養育と自らの実子による養育との差から来る困難を感じてきました。

これは「未経験者には伝わりにくい」ことも実感しています。

自身の体験から著者は、子連れで再婚をしたステップファミリーの、いわゆる「継親」の方や、社会的養護に関わる「里親」の当事者組織、いわゆる「血の繋がらない子育て」あるいは「実子ではない子育て」に関する情報を独自に調査してきました。

また、その活動の中でそれら形態毎の「立ち位置の違いによる困難の違い」を感じるようにもなっていました。例えば「里親」は基本的に自ら進んで「子 育て」を志願し、里親になっているのですが、「継親」の場合は自らが望む「結婚」に「子育て」が付随してくる形です。親族の場合は概ね、状況的に「止むを 得ず」「子育て」を引き受けている場合が多いと思われます。

これらの違いは「子育てにおける役割」の違いであり、本来の子育てには必要ない「それぞれの立場からの認知バイアス」を生じていると考えられますが、それらを立証した研究を見つけることは出来ませんでした。

また、著者のような「亡くなった遺族の子を中途から扶養する親族」という養育形態が所属可能な「当事者会」 というものを探し得なかったこともあり、著者はこの(著者自身が当事者となれるカテゴリである)「中途養育者サポートネット」というホームページ(当hp です)を立ち上げました。親族、里親、ステップファミリー等の既存のカテゴリーに所属する立ち位置の方々が協働する場を作る目的で、「中途養育」という概 念を提唱しようと考えたのが2010年5月のことでした。

「中途養育」という言葉の発見

「中途養育」という言葉は著者の造語ではありません。元々は毎日新聞の記事(2010.4.10)「虐待死 なぜやまない」 津崎哲郎・野沢和弘による「ニュース論争」文中、花園大学の津崎先生がこの「中途養育」という言葉を用いていたのを読み、「親の離別や死別等なんらかの理 由で子育てを引き継いだ親族」、「ステップファミリー(子連れの相手との再婚により継親となった人)」、「里親」、「養子縁組された親族」を統括して「実 子ではない子育てに関わる人間を表す上位概念」として使用出来ることに気づいたのです。子育てに中途から係るという意味においては、全ての乳児院、養護施 設職員、ファミリーホーム、ファミリーサポート等の職業的養育、保育に係る方々全般、またLGBT(lesbian, gay, bisexuality, transgender)のカップルによる子育ても(両親の子ではない点)から「中途養育」という概念であれば、属することが 可能です。

この「中途養育」という概念は児童養護施設や里親会等で既に行っているであろうと思われる「子どもの養育に関わる」研修や勉強の機会等を「継親」や「親族」、もしくはその他の「中途養育」に流用する上でも使用出来ると思われます。

「中途養育」という概念が一般的に認知されているとはいい難い現状はありますが、2010年10月には千葉県里親大会において「中途からの養育の留意点」という題でパネルディスカッションが行われ、2012年3月には厚生労働省「社会的養護の指針」の中に「中途からの養育であることへの理解」という言葉が使われるなど「中途からの養育」という言葉は一部で使用されはじめています。

この論文中では「子育てに途中から関ること」または「乳幼児期の愛着形成期に養育者が交代する事例」を「中途養育」と表記し、その養育に関わる人を「中途養育者」としています。

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