5 エミュレーション仮説

04.中途養育の困難とは

コンピュータの世界では「エミュレーション」という概念があります。

これは「特定のコンピュータやOSに向けて開発されたプログラムを、異なるコンピュータで使うこと(パソコン・IT・ネット用語辞典(2010)である。語源はエミュレート(emulate:模倣する・真似をする)からきており、異なるハードウェアやソフトウェア環境を模倣・物真似をさせる技術です。

模倣対象のシステムを近似や推論でモデル化する場合をシミュレート(simulate)といいます。

一般的に、OS(オペレーティング・システム)が異なる環境でのプログラム共有はプログラムの一部あるいは全てを書き換え、作り直す必要があります(プログラム移植)。しかしエミュレーションの概念ではプログラムを書き換えずに「エミュレータ」というソフトウエアを介して、擬似的に別のコンピュータの環境を作り出すことで、プログラムを動作させるのです。

※例えばこんな感じに、WindowsマシンでMacOSを動かすような。

1台のコンピュータに複数のPCの「仮想環境」を作り出すことによって互換性のないソフトを再開発する手間が省け、大幅なコスト削減に繋がりますが、著作権と守秘義務等、現実的な問題点もあります。

またアーケードゲーム等各ベンダー毎、ソフトウェア毎に仕様が異なっている場合、エミュレートが完全に対応できなかった際にゲームが動作しない、あるいは実機通りの動作をしない場合があります。

これを人間の養育現場に置き換えて考えてみましょう。

「子育てプログラム」をオペレートするOSとしての養育者の交代によって「子育てプログラム」を作り直すか、新しい養育者が既存の「子育てプログラム」を「エミュレート」するかということです。

この場合のエミュレートとは「実親あるいは前の養育者と同様の関りを築くために、子どもとの間に生じているアタッチメントの隙間をプログラム的に埋める」作業といってもいいでしょう。

前養育者と子どもが築いた「アタッチメント」が強いほど、エミュレーションは理論的に難しくなります。社会的養護の養育形態は、親役割を代替しない訳であるから、エミュレーションによる養育を行わない前提で進行しているといえるでしょう。里親のような家庭養護の形態においては、親役割をエミュレートすることで子どもとの愛着形成が成されると考える場合もあるでしょう。

※中途養育者はあらゆる形状のカードも読める必要がある?逆に、子どもの形状には規格があるのでしょうか?

ここで「中途養育者として親役割をエミュレートするべきか否か」という論点が発生すると思われます。

「愛着形成」と「親役割のエミュレート」は同義語ではありません。

エミュレートはむしろ発達の妨げになるおそれもあるでしょう。

親役割エミュレーションを実行するよりも、実親以外の養育者として「愛着形成」すれば良いことではないでしょうか。

社会的養護による職業的な養育形態は親役割をエミュレートしませんが、そこに愛着形成が行われない訳でもありません。

しかし母子関係信者はおそらく、母と子の役割を重視するでしょう。ここで(質問紙による調査からも判るように)半数以上の継親は実子でないことを社会的に伝えていないことを思い出してください。

子どもの家庭内における位置と、対外的な認知には矛盾が生じていることが判ると思います。これは認知的不協和を生み、子どもの精神発達に負荷をかけることに繋がると考えられます。

エミュレーションプログラムが実子と同じように働かないのは、実親がどのような愛着を形成したのかを測ることが(中途から養育に参加した者には)事実上不可能だからです。

中途養育される子どもが以前の愛着形成者の継承者として、新しい養育者を認めるか否かの問題もあるし、その母と子の絆をエミュレーションすることは、決して簡単なことではないと思われます。

 

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