01.過去の文献から中途養育を考える

一般論としての母親の育児困難とは


一般的な子育てとしては、全ての子育て研究が当てはまると言ってもいいくらいでしょう。しかし研究というものは平均値を取る過程で「子育て」の形態としての「はずれ値」を除外する場合があります。

柏木(2003) が指摘するように「心理学の親子研究は親子 研究を扱うとしながら、これまでほとんど母親の育児や母子関係に終始してきた」訳であり、「子育て支援」という言葉からは「母親」以外の養育者が想定され ているとは言いがたい現実がありました。

「中途養育者」においても「里父」「継父」「祖父」研究は見当たりません。

これは子育て=(実)母親がするもの、という認識から来ていると思われます。

「母親だから当たり前」といった言葉に代表される「母子依存概念」が「既定として」我々の「養育概念」に及んでいると考えても良さそうです。これが「母親」以外の養育者にとってどれほどの障壁になるのかは殆ど研究されていないため定かではありません。

しかし、現代の「一般的な」母親が子育てに対してどのような困難を感じているのかを知ることは、中途養育者に特化した困難を知る上でも重要であると思われます。

そだちの科学 (2008 ) 掲載の論文「子育ての過去・現在・未来」の中で原田(2008)は、大阪レポートと兵庫レポート、 そして1950年頃までのかつての子育てと比較し、現代の子育ての最も大きな問題点の一つ、自分の子どもを生むまでに、小さな子どもと関った経験がほとん どないということ、乳幼児を知らないまま親になること、子育て仲間の不在により、3人に1人が「母子カプセル」状態で孤立している現状を挙げています。結 論として、現代の母親たちは「親としての役割を担うこと」と自分自身の「自己実現」との狭間で悩んでおり、それは夫のちょっとした手伝いや近所の話し相手 の存在では解決されないほど根が深い問題だとしています。つまりそれは一般的な子育ての中に、既に「養育スキルの不足」及び、「社会的関わり」の不足が生じていると考えられます。

 

以上、一般的な子育てに関しては簡単に留めますが、今までにいくつか見てきた「中途からの養育形態」は、母子関係を重要視してきたわが国においては 「子育て」に関する一般認識からは「はずれ値」でありつづけた部分であり、その困難に関する認識は未だに「謎」のままで、それが一般的な子育てどう違うの か、それを知る、想像する意識自体が「一般的に」非常に低いと言わざるをえないでしょう。

また、「中途で養育者が交代する形態」を統合した研究は見当たりません。

それゆえに、先ずは中途養育に関わる上での困難以前の、各養育形態毎の困難の違いを丁寧に見ていくことから始めるべきと思われます。 …

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