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津久井やまゆり園の事件について 追悼文

time 2016/09/23

津久井やまゆり園の事件について 追悼文

平成28年7月26日未明、障がい者支援施設「神奈川県立津久井やまゆり園」にて、施設に入所する知的障がいのある方々が襲われ、19人が 命を奪われ、27人が重軽傷を負うという大事件が発生しました。
この事件に関して、私はこのサイトの管理者としての立ち位置から何が語れるのか、思いつかず長いこと書きかけた文章を放置していましたが…やはりどのような立場であっても声明を出すべきと思い、大変遅ればせながら、考えていることを雑文にまとめました。

被害に遭われ亡くなられた方々にはご冥福をお祈りするとともに、ご家族の皆様には心よりごお悔やみ申し上げます。
怪我をされ、治療に当たられている方々が一日も早く回復することを願っております。

この事件で当事者はもちろん、関係者、また自分自身、あるいは家族や知人に置き換えて、身の回りに起きかねない事件として、多くの方々の心が深く傷つき、ショックを受けておられると思います。

私自身も、身内に障がいを持つ者がいますし現在も少なからず障がい児支援に関わっておりますので、この事件のことを思うと、今でも内臓を掴まれるような違和感を感じたまま途方に暮れてしまいます。

連日のマスコミ報道もここのところ沈静化してきて、施設が建て替えられることがほぼ確定したという報道を見ました。

事件として解った(推測された)こととして、容疑者として逮捕されたのは、施設で働いていた男性であり、周囲に障がいに対する大きな偏見を話していたこと、そのため措置入院していたこと、衆議院議長に犯行予告ともいえる手紙を送っていたこと、大麻が検出されたことなどでしょうか。

それらの調査がいくら進んだとしても、犯人が殺人を実行して良い理由になるはずがありませんが、これら一つ一つの確認事項は結果的に精神障がい者や依存症患者を外集団として、自分たちを含む一般市民の身の回りから事件の核心を排除することに貢献しているように思います。

適切な言葉ではないかもしれませんが、まるで「殺人を犯すに至る理由探し」として使われているかのようです。

もちろん、私自身もこの犯行が「解せない」からこそ、この稀にみる犯行が行われた「理由」を考えました。
報道の事実(推論も含まれるとして)は犯行のきっかけを形成する要因の一つ一つかもしれませんし、これらの積み重ねによって、行動に至るまでの信念のようなものを構築してしまったのかもしれません。

しかし、私たちが見逃してはいけないこととして、容疑者が犯行に至る過程として様々な環境要因や認知の積み重ねがあったとしても「誰でも容疑者と同じ行動を取る可能性がある」ことを否定することにはならないこと。

その可能性の中には「自分自身や近親者も同じ犯行をとる可能性」が含まれること、これらを否定することには繋がらないのです。

自分も場合によっては犯人に通じる思想を持つに至る可能性があること。この事実を認めることは怖いことかもしれませんが、おそらく容疑者は何の特異性も持たない「普通の」人間だという認識はそれほど間違ってはいないと思われますし、既に多くの人はその可能性について暗に理解しているのではないでしょうか。

自分や近親者が「恐ろしい事件をおこす可能性がある」とすれば、何を信じて生活していけばいいのか、わからなくなってしまいます。

 

また、この事件についてのニュースを拾い読みしているうちに、「匿名性」についての記事をいくつかみかけました。

被がい者の実名報道はこの国では一般的なようですが、今回の事件については犠牲者やけが人の氏名が公表されていないという事について、意見がわかれているというものです。

これについても、多くの人が感じていることは、個人情報を保護するのか、あるいは尊厳を持って報道するのか、ということかと思います。

「社会的弱者」に対しての人権なのか、あるいは身内の保護なのか。

「守るべき存在」という認識が結果的に障がい者に対して「上から目線」で見ることに繋がっているのではないか、という意見もあるようです。

しかし、家族(親族)にとって、障がいの有無に関わらず、家族を構成するひとりひとりについて、自分と切り離して客観的に考えることは出来ない(あるいは、してはいけない)存在であることは忘れるべきではないと思います。

社会は家族内の取り決めに対して責任を負わない代わりに、様々な義務を負わせています。これらはいわゆる連帯責任という範疇の事象かと思われます。

被がい者の家族でも、加がい者の家族でも、家族(親族)というユニットに所属する者は、(知られることによって何かメリットがあれば別かもしれませんが…)そのネガティブな事象を、人に知られたい訳がないのです。

中途養育に関わる家族、親族は障がいの有無と直接関係があるとは言えませんが「(目に見えない事実を)言わずに済むなら黙っていられる」という点において、おそらく多くの(目に見える)障がいを持つ家族以上に、秘密を持っているといっても過言ではないかもしれません。

私自身は、マスコミ関係者が被害にあった障がい者の名前を公表しなかったことに対しては賛成も反対も、ありません。

それよりも、このような事件が「腑に落ちない」ことによって、社会全般の「対人コミュニケーション」が、より閉じていく結果につながる事を恐れます。

人を信じられなくなれば、関わることが怖くなるのは当たり前かもしれませんが、自己開示(家族開示)を恐れる社会に、明るい未来があるとは思えないのです。

 

また、報道のいくつかを確認していくと、犯人は何度も「これから自分が行おうと考えている犯行」について、社会に対して「承認作業」を行っていたのではないかと思います。
大学時代の友人、施設の職員、自治体、病院、衆議院議長への手紙。これら全てが、犯人の「障碍者に対する偏見」を容認してしまったこと、行動への思いを強化してしまうことに貢献した可能性を感じます。

もちろん、私は犯人と直接関わっていた人々、関係者を責めることが正しいとは思っていません。

むしろ、誰でも関係者になる可能性がある、その際に自分はこういった思考を持つに至った個人に対してどう感じ、どう接するのか。

この事を、この事件をニュースで知った全ての人が、自分に関係したこととして、問題意識をもって考えていくことが重要ではないでしょうか。

世の中「関係ない」と思ったら、何も変わらないと思います。

それは既に「世の中を良くしない」事に、貢献しているとも言えるのです。

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Facebookやtwitterでは本名ですが、来訪者が匿名でも参加しやすいよう、あえて以前のブログ時代からのニックネームにしています。 日本心理学会認定心理士 家族研究・家族療法学会 会員 家庭の様々な課題を解決に向けて支援するA-Step代表 その他不登校・発達しょうがいに関わる地域の親支援にも携わっています。

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